年金は何歳から受給できる? 受け取り時期や方法による違いについても詳しく解説

年金は何歳から受給できる? 受け取り時期や方法による違いについても詳しく解説|株式会社イー・トラスト

年金を実際に何歳からもらえるかは、年金の制度変更によって変わっていくためわかりにくい面があります。しかも、現状の制度では受給開始時期の繰上げや繰下げも可能です。

今回は、年金受給開始時期について詳しく解説します。受給開始時期の違いによるメリットやデメリットも紹介しているので、何歳から受給すればいいのかを検討する際の参考にしてくださいね。

1.日本の公的年金制度を理解すると何歳からもらえるかが見えてくる


日本の公的年金制度のうち、「老齢年金」は国民年金(基礎年金)と厚生年金の2階建て構造となっています。このうち国民年金については、日本国内に住む20歳以上から60歳未満のすべての人が加入しなくてはなりません。

ほかにも「障害年金」「遺族年金」と合計3つある公的年金制度について説明します。基本的な内容ですが、認識間違いがないよう改めて確認しておきましょう。

国民年金(基礎年金)

国民年金は、2階建て構造の1階にあたるといわれる年金の基本的な部分です。

国民年金を支払い、受給の要件を満たすと、将来「老齢基礎年金」として受け取れます。老齢基礎年金を満額受け取るには、国民年金を20歳から60歳になるまでの40年間(480ヵ月)もれなく支払うことが必要です。

なお、国民年金の被保険者は、以下のとおり第1号から第3号までに分類されます。

  • 第1号被保険者:自営業者や学生、無職など
  • 第2号被保険者:会社員や公務員
  • 第3号被保険者:第2被保険者に扶養されている配偶者

厚生年金

厚生年金は、2階建て構造の2階部分にあたる年金です。国民年金第2被保険者は、厚生年金保険料を支払うことで老齢基礎年金に上乗せして「老齢厚生年金」を受給できます。

厚生年金に1ヵ月でも加入していれば、将来、老齢厚生年金を受け取ることが可能です。

特定の人がもらえる年金

公的年金には老齢基礎年金と老齢厚生年金からなる「老齢年金」のほかに、特定の人がもらえる「障害年金」と「遺族年金」があります。

障害年金は、病気やケガが原因で障がい者となった場合に受け取れる年金です。一方の遺族年金は、生計維持関係にある被保険者が死亡したときに遺族が受け取れます。

ただし、公的年金は「1人1年金」が基本のため、2つ以上の年金を同時に受給することは原則できません。支給事由(老齢や障害、遺族)が異なる複数の年金の受給資格を満たす場合には、いずれか1つを選択する必要があります。なお、65歳以降は、特例的に支給事由が異なる2つ以上の年金を受給できるケースもあります。

2.実際に年金は何歳から受け取れるのか


実際に老齢年金を受け取れるのは何歳からなのでしょうか。ここでは、年金の受給開始年齢について説明します。受給開始年齢の幅や受け取り開始時の注意点もあわせて確認してください。

年金の受給開始年齢は原則65歳から

老齢基礎年金も老齢厚生年金も、受給開始は原則65歳です。ただし、65歳から受給するには、10年以上の受給資格期間が必要となります。受給資格期間とは、年金を受給するために必要な加入期間のことです。年金保険料を納付した期間や、保険料を免除された期間の合計によって算出されます。

また、65歳になったら自動的に年金が振り込まれるわけではないので注意しましょう。受給資格を満たしている人には、誕生日の3ヵ月前に年金請求書が送付されます。請求書を提出して、手続きを完了しないと年金を受け取ることができません。

実は年金の受給開始年齢には幅がある

老齢年金の受給は、原則65歳からですが、繰上げ・繰下げ受給することもできます。

繰上げ受給は、受給開始年齢を60歳~64歳に早めることが可能です。一方、66歳~75歳までの間に年金を受給する繰下げ受給も選択できます。

3.繰上げ・繰下げ受給は慎重に検討


日本の老齢年金は、ライフプランにあわせて自分の好きなように受給開始年齢を変更できます。しかし、受給開始時期を変更する際は、慎重な検討が必要です。

受給開始年齢を変更する要件

年金受給資格を満たしている人であれば、65歳を基準に1ヵ月単位で繰上げ・繰下げ受給できます。ただし、老齢厚生年金を繰上げ受給するためには、厚生年金の被保険者期間が1年以上必要です。

繰上げ受給

繰上げ受給すると、65歳を待たずして年金を受け取れます。ただし、老齢基礎年金と老齢厚生年金の繰上げは同時におこなう必要があり、片方だけを繰上げることはできません。

また、支給額が1ヶ月当たり0.4%減額される点に注意が必要です。最大幅の60歳まで繰上げた場合、24%(※)もの減額となってしまいます。※減額率=0.4%×繰上げ月数(最大60ヵ月)

繰上げ受給を希望する際は、年金事務所または年金相談センターへの申請手続きも必要です。申請時点で減額率が決定され、その減額率は一生変わらないため、申請時期も十分に検討しましょう。

繰下げ受給

老齢年金の受給開始時期を、66歳以降に遅らせるのが繰下げ受給です。繰下げ受給すると1ヶ月当たり0.7%増額支給され、最長の75歳まで繰下げると年金受給額が84%(※)増額されます。※増額率=0.7%×繰下げ月数(最大120ヵ月)

繰下げ受給は、老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に申請できるため、「先に基礎年金だけ受給して、厚生年金は繰下げて受給額を上げる」など状況にあわせた調整が可能です。ただし、遺族年金や障害年金を受け取る権利がある場合は、老齢基礎年金の繰下げはできません。

繰下げ受給する場合は、65歳になる3ヶ月前に届く年金請求書をすぐに提出する必要はありません。1ヶ月単位で繰下げられるので、受給開始したい月の前月に請求書を提出しましょう。

受給開始年齢を変更するメリット

受給開始年齢の変更は、繰上げ、繰下げともにメリットがあります。

まず、受給開始年齢を繰上げるメリットは、早期に安定した収入を得られることです。60歳定年や早期退職した場合に無収入となることを避けられます。

繰下げ受給のメリットは、受給額が増えることです。また、受給額の増額は生涯にわたって続くため、長生きするほどもらえる年金が多くなります。

受給開始年齢を変更するデメリット

受給年齢変更にはデメリットもあります。繰上げ、繰下げどちらを選択する場合も、老後の生活設計をしっかりとおこなって、慎重に選択しましょう。

年金を繰上げるデメリットは、受給額の減額です。しかも、減額された受給額は、生涯にわたって続きます。また、遺族厚生年金などほかの公的年金との併給ができなくなったり、国民年金の任意加入ができなくなったりする点にも注意が必要です。

受給開始時期を繰下げるデメリットは、受給できる年金の増額によって税金や社会保険料の負担が大きくなる点です。繰下げ受給する場合は、思ったよりも手取り額が少ないといった状況にならないよう、事前に確認しておきましょう。

4.公的年金の支払い期間


公的年金を受給するには、原則60歳までの支払いが必要です。しかし、万が一未払いや免除されて追納していない期間があると、年金を満額受け取ることができません。

そこで、60歳を超えても任意加入できる制度が用意されています。また、厚生年金の支払い期間を伸ばして、受け取れる年金額を増やすことも可能です。

60歳以降の年金の支払いについて解説します。

60歳からは任意加入となる国民年金

国民年金には、60歳以上65歳未満の人が加入できる「任意加入制度」があります。

国民年金は原則60歳までの方に加入義務が課せられています。しかし、60歳時点で未納や免除によって納付済期間が40年(480ヵ月)に満たない人は、老齢基礎年金を満額受給できません。そこで、任意で国民年金に加入して保険料を支払うことで、未納分を補てんできます。

60歳を超えて任意加入する必要性は、ねんきん定期便やねんきんネットなどでこれまでの支払い状況を確認したうえで判断しましょう。とくに、学生納付特例制度を利用して追納していない人は満額受給できないため、任意加入をおすすめします。

最長70歳まで支払える厚生年金

国民年金保険料の支払いが原則60歳までなのに対し、厚生年金保険料の支払いは最長で70歳まで可能です。たとえば、定年が70歳の会社に勤務している場合、60歳を過ぎても保険料を支払い続けられます。

年金の支払い期間と支払い額によって受給額が変わってくるため、条件が整っていれば支払いの延長を検討しましょう。

5.【まとめ】何歳から年金をもらえるかは今後の制度変更も注視


年金をもらえるのは原則65歳からですが、繰上げ受給によって60歳からでも受け取れます。また、75歳まで引き延ばして年金額を増やすことも可能です。

しかし、本記事でご紹介した受給開始年齢や条件は、あくまでも現時点(2023年1月執筆時点)で施行されている制度です。日本の年金制度は、若い世代が納めた保険料を原資として高齢者へ支払う仕組みになっているため、出生率や所得の影響を少なからず受けます。年金の受給開始年齢や条件は、最新情報を常にチェックするようにしてくださいね。

<参考・参照記事>

 

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