老後の年金額は、経済状況や労働人口の影響を受けて毎年改定されます。「いまの若い人たちが65歳になる頃には年金額が大幅に減っている」なんて言葉を聞いて、不安になる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、年金をいくらもらえるのか、どのように計算すればいいのかを詳しく解説します。老後資金を増やす方法もあわせて紹介しますので、もらえる年金額に不安がある方は、ぜひ最後まで読んでください。
老後に受け取れる2種類の公的年金
日本の公的年金制度のうち、老後に受け取れる「老齢年金」は2種類あり、2階建て構造となっています。1階部分が対象年齢を満たす日本国民全員が加入する「国民年金(基礎年金)」で、2階部分が会社員や公務員が加入する「厚生年金」です。
公的年金の仕組みを正確に理解していない人も少なくありません。改めて公的年金とはどんな制度なのか、確認していきましょう。
加入が義務付けられている国民年金
2階建て構造の1階部分にあたる国民年金は、日本国内に住む20歳から60歳までのすべての人が加入を義務付けられています。そして、国民年金を支払うことで将来もらえるのが「老齢基礎年金」です。
国民年金を20歳から60歳までの40年間、満480ヵ月支払えば、「老齢基礎年金」を満額受け取れます。なお、老齢基礎年金の受給開始は原則65歳からです。ただし、希望すれば繰り下げや繰り上げ受給をすることもできます。
会社員や公務員の多くが受け取れる厚生年金
2階建て構造の2階部分にあたるのが厚生年金です。会社員や公務員が該当する国民年金第2号被保険者が厚生年金を支払うと、「老齢基礎年金」に上乗せされる形で「老齢厚生年金」も受け取ることができます。
なお、厚生年金に1ヵ月でも加入していれば、老齢厚生年金の受給が可能です。厚生年金受給者は国民年金のみの受給者と比べて、大幅に受給額が増加します。
公的年金の平均的な受給額と計算方法
国民年金(老齢基礎年金)の受給額は、20歳から60歳になるまでの40年間における国民年金の納付月数に応じて計算されます。一方、厚生年金(老齢厚生年金)は加入月数や支払った保険料に応じて受給額が決定するため、計算式がすこし複雑です。
平均的な年金受給額や計算方法を詳しくご紹介します。将来設計を立てる際などの目安としてご活用ください。また、年金の受給額は、日本年金機構の「ねんきんネット」でも確認できます。
平均的な年金受給額
実際の受給平均額を確認してみましょう。厚生労働省年金局が発表している「令和二年度 厚生年金保険・国民年金事業年報」によると、年金の平均受給額は国民年金が月額5.6万円、厚生年金が14.6万円です。
厚生年金受給者は国民年金のみの受給者と比べて、2倍以上も受給できることがわかります。
国民年金の受給額計算方法は簡単
老齢基礎年金の受給額を計算する方法はとてもシンプルで、国民年金の納付月数に応じて受給年金額が計算されます。
受給年金額=777,800(*令和4年度の年額)× (保険料納付月数 ÷ 480ヶ月)
つまり、40年間(480ヵ月)もれなく保険料を支払えば、満額の777,800円(※1)を受給できる計算です。しかし、未納の月数があれば、その分受給額は減額されてしまいます。
また、保険料の納付を法的に免除された期間がある場合にも、免除月数に応じて受給額が減額されるのでご注意ください。
やや複雑な厚生年金の計算方法
とてもシンプルな老齢基礎年金に比べて、老齢厚生年金の計算方法はすこし複雑です。以下のとおり、報酬比例部分を主として、条件次第で経過的加算と加給年金が加わります。
受給年金額 = 報酬比例部分 + 経過的加算 + 加給年金
報酬比例部分とは、年金の加入期間や過去の報酬に応じた支払保険料によって計算される部分です。平成15年3月以前の加入期間と、平成15年4月以降の加入期間で分けて、以下のように計算します。
・平成15年3月以前
平均標準報酬月額 × (7.125 ÷ 1000) × 平成15年3月以前の加入月数
・平成15年4月以降
平均標準報酬月額 × (5.481 ÷ 1000) × 平成15年4月以降の加入月数
平均標準報酬月額は、各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を加入期間の月数で割って求めます。
受給開始年齢によっても増減する
老齢年金は原則65歳になったときから受給を開始できますが、繰り上げ・繰り下げ制度を利用すれば、1ヵ月単位で受給開始年齢の変更が可能です。ただし、それぞれ受給金額は増減する点に注意しましょう。
繰り上げ受給を申請して60~64歳で受給を開始すると、繰り上げた分の受給額が1ヶ月当たり0.4%減額されます。一方で、受給開始年齢を66~75歳に繰り下げた場合は、受給額が1ヵ月当たり0.7%増額されます。さらに、増減した受給額は一生涯続きます。
老後資金を増やす方法
国民年金と厚生年金の受給額は、老後資金として十分な金額でしたか?「思っていたよりも少ないな」と感じる方もいるのではないでしょうか。
そこで、年金だけでは老後資金が不足しないか不安な方のために、資産形成の方法をいくつかご紹介します。
収入を増やす
収入を増やすと、預貯金に回せる金額が多くなるばかりではなく、厚生年金の受給額にも大きく影響します。給与が上がればその分保険料も上がるため、老齢厚生年金の受給額を増やすことが可能です。
もし、現在の職場で給与を大幅に上げることが難しい場合は、副業も検討しましょう。副業でスキルアップを果たせば、よりよい条件の職場に転職できる可能性もあります。
iDeCoや個人年金保険を活用する
公的年金である国民年金と厚生年金に上乗せする制度として、「私的年金」という任意で加入できる年金制度があります。代表的な私的年金が、iDeCo(個人型確定拠出年金)や個人年金保険です。
特に、厚生年金の対象とならない個人事業主の方は、私的年金を積極的に活用して老後資金を確保しましょう。iDeCoや個人年金保険は、支払った保険料(掛金)が所得控除の対象になる点も大きなメリットです。
投資信託などの金融商品に投資する
投資信託などの金融商品に投資することも、老後の資産形成につながります。少額から投資ができてプロに運用を任せられる投資信託は、投資初心者の方におすすめです。なかでも、譲渡益などにかかる税金が一定枠内であれば非課税になるNISA(ニーサ)は、投資の入口として最適といえます。
ただし、投資にはリスクがつきものです。運用次第で元金を下回ったり、大きく損をしたりするおそれがあることは覚えておいてください。
不動産経営を始める
不動産経営(不動産投資)も投資の一種ですが、現物資産が手に入るため、老後の資産形成としておすすめです。さらに、会社員や公務員など給与所得のある方であれば、不動産経営をすると所得税を節税できる可能性があります。
所得税の課税対象は、給与所得や不動産所得、事業所得などをあわせた総収入額です。不動産所得は「家賃などの総収入-必要経費」で割り出されますが、この不動産所得金額がマイナスだった場合には、給与所得から赤字分を引くことになるため、総所得が低くなり所得税を軽減できます。
【まとめ】年金受給額をシミュレーションして老後の資金計画を立てる
将来受給できる年金額を把握しておくことは、老後資金を準備するうえで重要なポイントです。やや計算方法が複雑な厚生年金も含めて、老後資金の基礎となる公的年金がいくら受給できるのかを確認しておきましょう。
老後の生活イメージに対して、公的年金の受給額で不足する場合は、別の方法で資金を確保することも必要です。iDeCoやNISAといった金融投資や副業を検討しましょう。また、現物資産の残る不動産投資も、老後の資産形成としておすすめです。いざ老後を迎えてから慌てないように、お金の計画は事前にしっかりと立てておきましょう。