30代で必要な貯金額は人によって大きく異なるため、一概にはいえません。しかし、結婚や出産、住宅の購入など一般的なライフスタイルをモデルにすると、700万〜1,000万円程度の資金が30代で必要です。一方で、実は30代の平均貯金額は、必要とされる資金を下回っています。
30代でどれくらい貯金をすればいいのか、平均的な30代の貯金額はいくらなのかを詳しく解説します。生き方や重要視することは人それぞれのため、平均額に振り回される必要はありません。ご紹介する金額を参考に、ぜひ改めて人生設計を考えてみてくださいね。
もくじ
世間の30代はいくら貯金しているのか
これから貯金を考える人にとって、世の中の30代がいくら貯金をしているのかは気になるポイントです。実は、世代別の貯金額は毎年公表されています。とくに信頼性の高い、金融広報中央委員会が公開する、2022年版の「家計の金融行動に関する世論調査」をもとに、30代の貯金額をみてみましょう。
データを読み解く際に重要な、平均値と中央値の違いもご紹介します。
平均値と中央値の違い
世論調査データには、平均値と中央値の2種類のデータが存在します。言葉だけをみるとどちらも似たようなニュアンスですが、実際には意味合いがまったく異なるので注意しましょう。
平均値は、データの合計をデータの数で割った値です。一方、中央値は、調査対象の値を小さい順で並べたときに、中央に位置する値です。たとえば、200万円、300万円、400万円、500万円、1,000万円の5つのデータがあるとします。平均値は480万円、中央値は400万円です。
より実態を正確に把握できるのは、中央値だといわれています。貯蓄額が極端に低い人や極端に高い人のデータが含まれている場合、平均値はこれら一部の極端なデータに引っ張られてしまい、実態とかけ離れた値が出やすいためです。
30代の平均貯金額は697万円
金融資産保有世帯のみを対象とした場合、30代の平均貯金額は、二人以上世帯で697万円、単身世帯で741万円です。この平均貯金額には、預貯金以外に積立型保険商品、個人年金保険、債券、株式、投資信託、財形貯蓄が含まれます。しかし、日常的な生活費の出し入れ分は含まれていません。
中央値は平均額よりも低い
30代の貯金額の中央値は、平均値よりも低くなっています。金融資産保有世帯のみを対象とした場合、30代の中央値は二人以上世帯で390万円、単身世帯で270万円です。
平均値は一部の突出した資産を持つ人によって押し上げられてしまうため、中央値のほうが実態に近い値といえるかもしれません。
30代以降で必要になる資金
一般的に30代は給与があがってくる年代ですが、出費も増える傾向があります。計画的に貯金をしておかないと、思い描いていたライフスタイルを送れなくなるおそれがあります。30代以降でどんなことにお金がかかるのか、日頃からイメージしておきましょう。
30代を中心に資金が必要になる場面をいくつかご紹介します。
ライフイベントが集中する30代
30代は、その後の人生を左右するライフイベントが集中する年代です。結婚、子どもの誕生と成長、住宅の購入など、どのライフイベントも比較的大きな支出を伴います。
厚生労働省の婚姻年齢の推移データでは、2019年の初婚年齢は男性31.2歳、女性29.6歳でした。男女とも30代で結婚する人が多くみられます。そして、気になる費用ですが、「ゼクシィ結婚トレンド調査 2022 」によると、挙式や新婚旅行などを含めた結婚費用の総額は、全国平均で371.3万円です。
さらに、出産にかかる費用は、正常分娩の場合で50万円前後といわれています。家族が増えれば、住宅の購入が必要になる可能性もあります。一般的には住宅ローンを利用するものの、頭金として物件価格の2割程度は必要です。
どの費用も、資産家ではない限り、短期間に用意できるものではありません。30代になる前から計画的に貯金しておきましょう。
活動的なうちに有効なお金も使いたい
30代は金銭的に少しゆとりができ、視野も広がるため、自己実現のために積極的に活動したい時期でもあります。自由な時間がとれるうちに、人生にとって意義のあることにお金を使いましょう。
海外旅行をしたり、スキルアップにつながるスクールに通ったりと、自己投資も重要です。30代は体力的にもまだ余裕があるので、趣味に没頭するのもいいでしょう。必要な資金は人によって大きく異なりますが、人生で30代は一度しかありません。将来を考えて貯金することも大切ですが、使うべきところではしっかりとお金を使って充実した人生にしましょう。
老後資金についても考える
30代以降から準備しておきたいのが老後の資金です。30代だと、まだ具体的に老後のイメージはできないかもしれません。しかし、老後資金の準備はできるだけ早い時期から始めることで、無理なく貯められます。
また、資産形成のための投資は、少額でもいいので若いうちに始めたほうが有利です。投資期間が長くなるほど、リスクを抑えられます。万が一損失を出してしまっても、早い段階であれば取り戻す期間が十分に残っています。
日常生活ややりたいことを過度に我慢する必要はありませんが、コツコツと少しずつ老後に向けて貯金を始めましょう。
ゼロから始める30代の資産形成
資産形成は30代から始めても、遅すぎることはありません。焦らず一歩ずつ、目標とする資産をつくっていきましょう。
20代にあまり資産形成を考えてこなかった人でも、ゼロから始められる資産形成方法について解説します。
資産形成の最初の一歩は貯蓄
資産形成にはさまざまな方法がありますが、まず取り組みたいのが貯蓄です。急な出費やライフスタイルの変化に対応できるよう、手元の現金に余裕を持たせておきましょう。
資産形成を始めるからといって、貯金もないのにいきなり投資を始めることはあまりおすすめできません。万が一手元の現金が足りなくなった場合、たとえ投資で損益を抱えているタイミングでも現金化する必要がでてくるためです。
貯金をしても目に見えて資産は増えていきませんが、銀行に預けておけば減ることもありません。もっとも確実な資産形成方法の貯蓄で、まずは生活防衛資金を用意しておきましょう。必要な生活防衛費の金額は人によって異なりますが、生活費の3~6カ月分が目安です。
積み立て型投資
これから資産形成を始めるのであれば、積み立て型投資から始めてみましょう。つみたてNISAやiDeCoといった税制優遇のある投資であれば、利益に対する税金が限定的なので、投資成果をそのまま受け取れます。
ただし、つみたてNISAもiDeCoも年間の投資上限が設けられており、仮に潤沢な資金があっても資産を一気に増やすことはできません。いわゆる、低リスク低リターンの投資で資産の基盤を構築していきましょう。
また、不動産投資も積み立て型投資の一種といえます。物件の取得には高額な費用がかかりますが、ローンでまかなうこともできるため、手元資金を一気に投資するわけではありません。積み立て型投資のように、毎月の家賃収入からローンを返済しながら少しずつ資産を増やしていけます。さらに、ローンを完済すれば収益性が上がるうえ、現物資産が手に入ることも不動産投資のメリットです。
積極的な投資運用
株式投資や投資信託など、大きなリターンを狙った積極的な投資運用も資産形成方法の1つです。ただし、短期的には損益を抱えるリスクが高いうえ、場合によっては大きく資産を減らす結果にもつながりかねません。
積極的な投資運用をする際は、できるだけリスクを分散して運用しましょう。また、貯蓄や積み立て型投資といった資産を別にもっておき、万が一投資運用をしていた資産を失っても立て直せるように備えておくことが大切です。
30代なら貯金額が低くても挽回できる
現在の貯金額が平均値や中央値を下回っていても、30代であれば慌てる必要はありません。生活を見直して、計画的に貯金をしていくことで、十分に挽回できます。また、今しかできない経験にお金を使うことも、30代にとっては大切なことです。
人生の充実度とライフイベントのバランスをとりながら、コツコツと貯金額を増やしていきましょう。生活が安定する貯金額さえ準備できれば、投資を始めることで着実な資産形成を実現できます。
まずは中央値、次に平均値を目指しながら、少しずつでいいので貯金額を増やしていってくださいね。
年齢別リアルな貯金額や効率的に貯金するポイントについてはこちらの記事で詳しく解説されています。あわせてご確認ください。