今プライベートバンクが、富裕層から注目を集めていることをご存じでしょうか。プライベートバンクは「バンク」という名の通り銀行の一種ですが、通常の銀行とは異なる特徴を持っています。
今回は、プライベートバンクの概要や富裕層から注目されている理由、利回りについて詳しく解説します。プライベートバンクの利用を検討している方や興味のある方は、ぜひ参考にしてください。
もくじ
プライベートバンクとは
プライベートバンクとは、富裕層を対象に資産管理や資産運用といった金融サービスを提供している銀行です。しかし、銀行といっても誰もが気軽に利用できるわけではありません。利用するには、さまざまな条件をクリアする必要がある特殊な銀行です。
実は古い歴史を持つプライベートバンクについて、成り立ちや特徴などを詳しく解説します。
プライベートバンクの歴史
プライベートバンクのもっとも古い形態は、外国へ出稼ぎに出るスイス人傭兵たちの資産管理から始まりました。ヨーロッパで発達したこともあって、現在でもヨーロッパにはプライベートバンクを専門として業務をおこなう銀行が数多く存在しています。
とくに、19世紀の始めに永世中立国となったスイスでは、資産の安全な逃避先として、古くからプライベートバンクが発展してきました。衝突が絶えないヨーロッパにおいて、不可侵の国であることを貫いていたスイスは、資産を守るのに最適な場所だったのです。第2次世界大戦でも近隣諸国の資産家が、ナチスの迫害から逃れるためにスイスのプライベートバンクに多額の資産を移したといわれています。
近年ではヨーロッパ諸国だけではなく、国情の不安定な中東などの国々からも顧客を集めているようです。スイスのプライベートバンクでは、2.7兆ドルもの資産が運用されているという調査結果もあります。
プライベートバンクの特徴
プライベートバンクは、富裕層を対象とした金融サービスであることが最大の特徴です。銀行と証券会社の機能を併せ持っており、通貨はもちろん株式や債権、ヘッジファンドなどを含む多種多様な資産を一括管理してくれます。
プライベートバンクでは、一般的な銀行のように預金を顧客へ貸し出したり、勝手に資産を運用したりすることは一切しません。プライベートバンクに預けた資産は、独立性の高い顧客のものとして管理されています。
管理にあたっては顧客ごとに担当のバンカーがつき、的確に資産運用をサポートしてくれます。さらに、複数分野にわたってそれぞれのスペシャリストを抱えており、運用目的ごとに最適な担当者をつけて相談できる仕組みです。
個別にカスタマイズされたオーダーメイドの資産運用サービスによって、顧客の状況に応じた最適なサービスが提供されます。
誰でも利用できるわけではない
プライベートバンクは、誰でも利用できるものではありません。利用するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。まず、プライベートバンクの口座を開設するには、最低でも1億円程度の資金や金融資産を持っていることが条件です。なかには、10億円以上の金融資産がなければ口座開設ができないプライベートバンクもあります。
日系銀行が運営しているプライベートバンクも、口座開設に必要な最低金額は5億円以上が目安とされており、利用ハードルはかなり高いといえるでしょう。審査も非常に厳しく、資産状況だけではなく家族構成まで徹底的にリサーチされます。たとえ富裕層であっても門前払いされてしまうこともあり、ごく少数の人しか口座開設はできません。
プライベートバンクの利回り
プライベートバンクは富裕層向けの特別なサービスなので、一般的な金融サービスと比較して良い利回りが期待できるイメージです。本当にプライベートバンクの利回りは高いのか、実際のところをご紹介します。
一般的な投資と利回りは変わらない
実は、プライベートバンクの利回りは、一般的な投資と変わらないケースがほとんどです。プライベートバンクの利用者は、高利回りをあまり求めません。すでに多額の資産をもっているので、リスクを抑えた運用を望む利用者が多くなっています。
とくに、スイスの銀行は安定的な運用を好む傾向があり、期待利回りはおおむね2〜8%です。日系銀行のプライベートバンクでも、5〜10%程度の利回りで運用されています。
あくまでも顧客の意向に沿った運用をおこなうので、目標とする利回りは運用目的やリスク許容度などによっても大きく異なります。実際の利回りがどのくらいになるのか気になる方は、いくつかのプライベートバンクを比較検討してみてはいかがでしょうか。
プライベートバンク特有の高利回り商品
基本的にはあまり高い利回りでは運用しないプライベートバンクですが、プライベートバンクを経由することで投資できる高利回りの金融商品も存在しています。「私募ファンド」や「私募債券」などと呼ばれる金融商品です。
私募とは、限られた人を対象に募集を展開する商品で、年率20%超の運用成果を達成しているものも少なくありません。ハイリスクハイリターンであるがゆえに、プライベートバンクを利用できる富裕層のみを対象に募集がおこなわれているのです。
富裕層がプライベートバンクに注目する理由
富裕層がプライベートバンクに注目する理由は多岐にわたります。プライバシーの問題や特別な運用プランの利用など、個人によっても理由はさまざまです。
富裕層にとってプライベートバンクはどのような存在なのか、代表的なものをご紹介します。
顧客に対する高度なサービス
プライベートバンクを利用すると、個人の状況に合わせたきめ細かいサービスを受けられます。プライベートバンクが提供するサービスは、資産運用プランのカスタマイズといった金融サービスにとどまりません。
たとえば、専門家によるコンサルティングもサービスの1つです。とくに、顧客が経営者である場合は、その会社の成長によって顧客である社長の保有する資産が増えていきます。コンサルティングをおこなうことは、プライベートバンクにとっても重要な業務です。大手金融機関系のプライベートバンクでは、本部と掛け合って有利な条件で事業融資を引き出したり、金融機関ならではのネットワークを活かしたビジネスマッチングを取り持ったりすることもあります。
ほかにも、子供の教育支援や最先端医療施設などの情報提供、オーダーメイド旅行の斡旋などをおこなっているプライベートバンクもあります。実は、非金融部分でのサービスも大きな魅力となっているのです。
プライバシー保護の重視
プライベートバンクでは、顧客のプライバシー保護を重視しています。多くの富裕層は、自らの資産をひけらかすことは好まないので、プライベートバンクには厳重な守秘性が求められるのです。
とくにスイスのプライベートバンクでは、非常に高い守秘性が確立されています。歴史の長い海外のプライベートバンクは、プライバシーの確保という面からも顧客の信頼を勝ち得ているといえるでしょう。
特別な資産運用の機会が得られる
プライベートバンクでは、普通の銀行では取り扱っていない優先出資証券や私募投信なども投資先の選択肢として用意されています。幅広い投資機会を得られることも、プライベートバンクが注目されている理由です。
プライベートバンクに限らず積極的な資産運用が必要
プライベートバンクでは顧客に対するサービスが充実しており、特別な高利回り商品を購入することも可能です。ただし、プライベートバンクの口座を開設するためには多額の資産を保有し、厳しい審査をクリアする必要があります。
実際のところ、多くの人はプライベートバンクには縁がありません。しかし、着実に資産形成をするためには、積極的な資産運用が必要であることは富裕層も一般層も同様です。投資を成功させるためにしっかりと計画を立て、金融に関する知識を今後も学び続けていきましょう。