安心して老後生活を送るために、退職金はかしこく活用したいものです。銀行に預けて消費するだけでは、多額の退職金でもいつか底をついてしまいます。一方で、まとまった退職金を適切に運用することで、老後資金に余裕を持たせることが可能です。
そこで、退職金運用の重要性やおすすめの方法、さらに成功させるためのポイントまで詳しく解説します。
もくじ
退職金運用の重要性
退職金のようなまとまった金額を手にした際、大切に取っておこうと貯蓄に回してしまう人は少なくありません。しかし、さまざまな理由から、退職金は運用をおこなって資産を増やしていくことをおすすめします。
退職金を運用する重要性について、3つの観点からみていきましょう。
社会状況の変化に対するリスクヘッジ
もっとも注意しておきたい社会状況の変化は、物価の上昇です。物価が上昇すると現金の価値は低下するので、銀行に預けたままではリスクになってしまいます。たとえば、100円を銀行で貯金していて物価が10%上昇した場合、100円で買えていたものが110円になるため、貯金額は変わらないのに同じものは購入できません。
また、現在の政策が継続されると、社会保険や税金の負担増、年金支給額の減額も大きなリスク要因です。退職金をそのまま貯金していても、実際に使える金額は減ってしまうおそれがあります。
そのため、退職金を適切に運用し、消費もしていないのに目減りするリスクを最小限に抑えることが重要です。
長寿命化や病気・ケガなどへの対応
日本人の平均寿命は伸びているため、退職後の生存年数とともに老後に必要な資金も増加しています。1955年と2020年の平均寿命の差は、男女それぞれ約20歳です。また、高齢になってからの病気やケガの治療は長期化しやすく、医療費の増加も家計を圧迫します。さらに、将来的に介護施設などに入居するようなことがあれば、まとまった資金が必要です。
快適な老後生活を送れるように、単なる貯蓄ではなく資産として増やしていくことを検討しましょう。
退職金を運用して老後資金の余裕を確保
退職すると時間的な余裕ができるため、さまざまなことに挑戦できます。しかし、退職金が生活費だけに消えてしまっては、せっかくのゆとりを十分に活かせません。適切に運用して資産化することで、余裕資金を生み出して老後生活を楽しみましょう。
平均寿命の延伸によって、あと何年生きてどれくらいの資金が必要になるかを正確に予測することは困難です。資金に余裕があれば、ある程度自由な使い道にも予算を割けるようになります。
退職金の運用方法おすすめ5選
退職金というまとまった資金を手にするまで、あまり積極的に運用を検討したことのない方もいるでしょう。退職金を運用する際は、大きな利益を追求するよりも、リスクの少ない方法を選ぶことが重要です。
退職金の運用という観点で選んだ、おすすめの運用方法を5つご紹介します。
株式投資
株式投資とは、投資先となる会社の株式を購入する資産運用です。株式投資では多くの場合、上場している公開株式を購入し、株価が上昇したタイミングで売却して差益の獲得を目指します。
しかし、退職金を運用するのであれば、売買益ではなく配当金を狙った安定した投資をおすすめします。業績が比較的安定しており、配当金の高い企業の株式を購入して長期保有することがポイントです。購入した株式が値下がりしても、売却をしなければ損失は発生しません。経営が安定していれば、多少の値下がりがあっても元の金額に戻る可能性があります。また、値下がり幅も大きくないケースが多いので、リスクは限定的です。
ただし、経済トレンドとは無関係に1社の業績だけに左右されるケースもある株式投資は、基本的にはリスクの高い運用方法なので事前に十分検討しましょう。
投資信託
投資信託とは、投資家から集めたお金をまとめて大きな資金とし、運用の専門家が株式や債券といった金融商品で資産を運用する方法です。投資で得た収益は、手数料を除いて投資額に応じて分配されます。
投資信託では、さまざまな国や業種の金融商品に分散投資をおこなうことが可能です。1社に投資する株式投資と比べて、圧倒的にリスクが低くなります。また、投資信託は少額の積み立てから始められる点も、初心者にとっては大きなメリットです。
株式投資のように急激な値上がりによる大きな利益は望めませんが、比較的リスクを抑えて安定した運用ができます。
NISA
NISAとは、2014年に始まった少額投資非課税制度のことです。本来、投資で得た利益に対しては税金がかかりますが、NISAを利用すれば一定額までは課税されません。
ただし、年間の投資金額に上限が設定されています。一般NISAが120万円、つみたてNISAは40万円までです。非課税期間は一般NISAが最長5年間、つみたてNISAについては最長20年間までとなっています。
年間の投資可能額が限定的なので短期間での大きな利益は見込めませんが、非課税で資産を増やしていける点はNISAの大きなメリットです。
定期預金
資産運用のなかでも、もっともリスクが少なく身近な方法は定期預金です。銀行にお金を預けるという点では普通預金と同様ですが、預入期間を設定することで利息が優遇されています。
ほかの運用方法とは比較にならないほどリスクが低く、万が一預け入れ先の銀行が破たんしても、元本1,000万円とその利息までは保護されるので安心です。
ただし、低金利政策が続いている現在は、資産の増加はあまり見込めません。一定期間引き出せないお金をプールしておくことで、ほかの資産運用で失敗した際の補てんや将来的な貯蓄として利用できる方法だと捉えておきましょう。
不動産投資
不動産投資とは、不動産物件を取得して家賃収入や売却益を得る資産運用です。不動産投資にはさまざまな種類があり、マンションやアパートを直接購入して所有する方法や、REITという投資信託方式、さらに最近では不動産クラウドファンディングという新しい投資手法も登場しています。とくに、REITや不動産クラウドファンディングは、多数の投資家から集めた資金を使って不動産を購入する方式なので、少額から始められる点がメリットです。
直接物件を購入する本来の不動産投資であれば、退職後も継続的に家賃収入を得られるので生活基盤が安定します。さらに、相続税の節税効果もあり、お子さんがいる場合などにも不動産投資は有効な運用方法です。
退職金の運用を成功させるためのポイント
老後の資金確保のために運用をおこなう際は、増やすことに固執するのではなく、資産価値を維持することを一番に考えるべきでしょう。退職金の運用を成功させるためのポイントを3つご紹介します。
適切なリスク管理
資産運用においてもっとも重要なポイントは、リスク管理です。とくに退職金の運用となると、損失が出た場合に補てんする収入のないケースが多いほか、そもそも時間的余裕もあまりないので十分に注意しましょう。
運用方法を選ぶ際には、リスクの程度と許容範囲を事前に明確化しておくことが大切です。撤退ラインを決めておけば、万が一の場合でも致命的な損失を避けられます。
幅広く情報収集をする
退職金の運用では、できるだけ幅広く情報収集をしましょう。まとまった資金の退職金が入ると、金融機関の営業から投資をすすめられる機会も多くなります。しかし、本当に必要な投資なのか、リスクはないのかを十分に検討することが重要です。
幸い、退職後であれば時間的余裕はたっぷりとあるので、情報収集をしっかりとおこなってからの投資判断が可能です。また、どれだけ有利な条件に思える投資でも、一度に全額を投じてしまうことは、よほどの確信がない限り避けましょう。
過度な利益を追い求めない
退職金の運用で重要なのは安定性です。投資において利益とリスクは表裏一体なので、過度な利益を追求すると、その分リスクも高まってしまいます。老後資金として目標とする金額をあらかじめ決めて、適切な範囲での運用を心がけましょう。
たとえば、比較的安定している不動産投資ですが、退職金を全額使って購入するのはやはりリスクを伴います。退職金の一部で購入できる物件を選んだり、一部にローンを利用したりと、分散投資できる余力を残しておきましょう。
【まとめ】退職金を計画的に運用すると老後の幅が広がる
退職金を運用して老後資金に余裕が生まれると、生活の幅がぐっと広がります。また、物価高などの社会情勢の変化、病気やケガといった万が一のリスクに備えるという意味でも、退職金の積極的な運用は重要です。再就職をしない場合、今後の収入がなくなってしまうだけに、手元にある退職金を有効活用しましょう。
退職金の運用で重要なのは、短期的な利益ではなく安定性です。目的の金額や予算に合った方法を選んで、無理のない運用をしてくださいね。