土地が売れても、実はお金がすぐに手に入るわけではありません。理由は、不動産の売買取引にはいくつかの段階があり、各段階が完了するごとにお金が入る仕組みになっているためです。
本記事では、土地が売れて実際にお金が入るタイミングや期間、さらに売買取引の流れと売主が支払うべきお金について詳しく解説します。
もくじ
土地の売却でお金が入るタイミングは2回
土地の取引では、一般的な品物の売買のように、お金と引き換えにその場で引渡をするわけではありません。購入の意思確認から契約、書類作成、引渡と複数の段階を経てようやく取引が完了します。土地が売れたあとの入金タイミングも、段階に合わせて2度設定されていることが一般的です。
土地の取引で入金されるタイミングを、注意点も含めてみていきましょう。
売買契約の締結で手付金が入る
土地が売れた際の最初の入金は、売買契約を締結したタイミングです。買主が購入と取引を最後まで継続させる意思表示として支払われるお金で、手付金と呼ばれています。
手付金は取引終了時には売却代金の一部に組み込まれますが、土地の代金の一部を前払いするわけではありません。あくまでも、契約を進行するための代金として支払われます。金額は双方合意のもとで決められ、一般的には売却価格の5〜10%程度です。
引渡時に残金が支払われる
2回目の入金タイミングは、実際に土地を引き渡すときです。不動産取引の契約書には、代金の入金と引き換えに土地を引き渡す決済日が盛り込まれています。2回目の入金時の金額は、手付金を除いた残金の全額です。
支払い方法についても、契約書で事前に取り決めておきます。不動産売買の支払い方法として一般的なのは、現金、銀行振込、金融機関発行の小切手です。入金が確認できたら、買主に対して領収書を発行します。
受領した手付金は引渡まで使わない
売買契約で受領した手付金は、引渡まで使わずに保管しておく必要があります。契約解除の理由によっては、手付金を返還する義務が生じるおそれがあるためです。
手付金を返還する義務のある契約解除の条件は、おもに2つあります。1つは、ローンでの購入で、買主が審査に通らなかった場合です。そもそも購入資金を調達できないため、売買そのものが成立しません。ローンを利用する売買契約では「ローン特約」という形で、ローン審査に通らなかったことを条件に解約できる旨を盛り込むのが一般的です。
売主側の責任によって、契約が解除になることもあります。売買契約締結後に、記載されていない欠陥や不具合が発見されたケースです。契約内容どおりに対処すれば取引を完了できますが、対応が難しい場合には契約を解除され、手付金を返還しなければいけません。
お金が入るまでにかかる実際の期間と早める方法
土地が売れた際の入金にかかる期間も、売主にとっては気になるところです。手付金に関しては契約締結時に入金されるものの、取引が完了するまでは実際に使うことはできません。
そこで、土地を売る際の流れとともに、入金までの期間について解説します。また、入金を早めるための方法も紹介するため、早くお金を手にしたい方は参考にしてください。
土地を売る際の実際の流れ
土地を売る際には、取引の完了までに大きく4つの段階を踏みます。最初の段階は、土地を売却する意思を不動産会社に伝えることです。不動産取引は個人でも可能ですが、買主を探す手間も考えると不動産会社に依頼することをおすすめします。
依頼を受けた不動産会社が、広告などを使って買主を探すのが次の段階です。買主が見つかるまでの期間は、立地条件や価格などによって異なります。土地の売却において、最も期間を予測しにくい段階です。
買主が見つかったら、いよいよ売買契約を結びます。売買契約書に記載された決済日までに登記変更の書類を作成し、入金を確認したら取引の終了です。
お金が入るまでの期間は1〜3ヶ月程度
土地の売却を決めてから実際にお金が入るまでの期間は、おおむね1〜3ヶ月です。買主がすぐに見つかれば、1ヶ月程度で取引が完了する場合もあります。
ただし、双方の準備が整わず、決済までにかなりの期間を要してしまうケースも少なくありません。特に、買主がローンを利用する場合、売買契約締結後にローンの申込みと審査を経るため、土地の引渡を終えるまでに3ヶ月程度かかります。
また、土地の場所や形状が原因で買主が見つからないことも、お金が入るまでに時間がかかる理由の一つです。土地の売買において、取引を完了するまでには不確定要素もあるため、入金までの期間に余裕をみておくことをおすすめします。
不動産買取なら入金までの期間を短縮できる
土地が売れてできるだけ早くお金を手に入れたい場合は、不動産買取がおすすめです。土地を売却する方法には、仲介と買取の2つがあります。仲介とは、不動産会社に買主を探してもらう方法です。一方で、買取は不動産会社に物件を直接買い取ってもらうため、入金までにあまり期間がかかりません。
また、仲介を希望していて、なかなか買主が見つからない場合にも買取は有効な手段です。ただし、仲介での売却よりも一般的に売却価格が安くなるため、買取を選択する際は慎重に判断してください。
土地を売る際には支払うお金もある
土地を売る際には、売主が負担すべき費用があります。多くの費用は売買代金の入金後に精算できますが、一部は入金前に支払う必要がある点に注意しましょう。
土地を売るにあたって必要な費用について、支出のタイミングも含めて詳しく解説します。
売却活動費用は原則かからない
不動産会社に土地の売却を仲介してもらう契約(媒介契約)を結べば、買主を探すための売却活動費用は原則必要ありません。不動産会社に支払う仲介手数料に、売却活動の費用も含まれているためです。
ただし、特別な広告をおこなう場合は、その内容に応じて追加費用が発生します。媒介契約を結ぶ際に、追加費用が発生する場合の内容を確認しておきましょう。
売買契約時には印紙代が必要
売買契約時に作成する売買契約書には、法的な効力を持たせるために収入印紙の貼付が必要です。印紙税法では、不動産の売買契約書を課税文書の一つとしており、売主と買主の双方が収入印紙を契約書に貼付して納税義務を果たします。
以下は、売買契約時に必要となる印紙税額の一部です。
不動産取引に係る契約書の印紙税額
契約金額(注1) |
印紙税額(1通または1冊につき) |
|
---|---|---|
本則税額 |
軽減税額(注2) |
|
100万円を超え500万円以下 |
2千円 |
1千円 |
500万円を超え1,000万円以下 |
1万円 |
5千円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 |
2万円 |
1万円 |
5,000万円を超え1億円以下 |
6万円 |
3万円 |
1億円を超え5億円以下 |
10万円 |
6万円 |
(注1)実際は1万円未満から契約金額の記載のないものまで13区分あり
(注2)平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に作成されるもの
多くの費用は引渡時に精算
売主が負担すべき費用の多くは、土地の引渡時に精算するのが一般的です。売主が支払う費用としては、仲介手数料、各種書類の作成料や登記手続き費用などがあります。特に、抵当権が設定されている場合には、通常の名義変更のほかに抵当権抹消の手続きも必要です。
多くの場合、書類作成や登記を依頼する司法書士も不動産会社が手配してくれるため、代金の決済後に精算できます。ただし、契約する不動産会社によっては、契約締結時に仲介手数料の半額を請求される場合もあるため事前に確認しておきましょう。
事前に費用がかかるケースもある
売りたい土地の状態や売却条件によっては、事前に費用がかかるケースもあります。代表的なのが、土地の境界線があいまいな場合です。測量を実施しなくても土地の売却は可能ですが、境界線が正しければより有利な条件で買手を探せます。また、測量費用は売主と買主のどちらが負担しても構いませんが、売買をスムーズに進めるために売主が負担するのが一般的です。
建物がある土地の場合も、事前に費用がかかってきます。住宅付きの土地として売却する場合はクリーニングやリフォームの費用がかかり、更地にするのであれば解体費用が必要です。より有利な条件で土地を売るために、不動産会社と事前にしっかりと打ち合わせをしましょう。
土地が売れてもすぐにお金が入るわけではない
土地を売ってお金が入るまでの期間は、一般的に1〜3ヶ月程度です。特に、仲介で売却する際は、買主探しやローン利用など売主側でコントロールできない期間もあります。土地が売れてもすぐにお金が入るわけではないため、ゆとりをもって計画的に売却しましょう。
また、売却する土地の状況によっては、事前に費用がかかるケースもあります。現状のままで売ることも可能ですが、境界があいまいな場合や古い家屋が建てられている場合、買主探しや価格面で売主が不利になりかねません。専門知識のある不動産会社に相談して、最適な売却プランを立ててください。