生き方・働き方が多様化しているなかで、アーリーリタイアについて詳しく知りたい方もいるのではないでしょうか。アーリーリタイアとは定年前に仕事を辞めて、残りの人生を貯金や資産運用で生活することをいいます。最近ではFIREとも呼ばれ、注目を集めている生き方です。
そこでこの記事ではアーリーリタイアの特徴や成功の方法について紹介します。メリットやデメリット、必要な金額などが分かれば理想の生活に一歩近づくことでしょう。
もくじ
早めに引退するアーリーリタイアとは?
近年アーリーリタイアが話題となり、ネット上に多くの情報が出回っています。アーリーリタイア関連の本も次々と発売され、手に取ったことのある方もいるのではないでしょうか。
アーリーリタイアは読んで字のごとく「仕事を早めに引退すること」です。早い段階で仕事を辞めることで、多くのメリットがあります。まずはアーリーリタイアの特徴を学びましょう。
アーリーリタイアの特徴
定年前に仕事を辞めて貯蓄だけで残りの人生を送ることを、アーリーリタイアといいます。「早期リタイア」や「FIRE(Financial Independence(経済的自立), Retire Early(早期退職)」とも呼ばれ、近年話題になっているライフスタイルです。
日本では定年退職というと65歳以上の年齢を指します。30代~50代あたりで会社を辞め、プライベートの時間を楽しみながら生活するのが魅力です。
セミリタイアとの違い
アーリーリタイアに似た言葉に「セミリタイア」があります。セミリタイアはアルバイトや投資などで必要最低限の収入を得ながら、社会との接点を完全に断つことなく生活することです。
アーリーリタイアと異なり、全ての時間をプライベートに充てられません。ただし万が一全ての貯蓄がなくなったときのことを考えると、セミリタイアのほうが安心できます。仕事とプライベートに割く時間をうまくコントロールできるのが、セミリタイアの魅力です。
アーリーリタイアをする3つのメリット
アーリーリタイアには次の3つのメリットがあります。
- 仕事のストレスがなくなる
- 自由に時間を使える
- 新たな挑戦ができる
これまで1日の大半が仕事だった生活から一変して、「自分のために使える」時間がメインになります。仕事や仲間と距離を置けるため、ストレス解消にもつながるものです。どのように私たちの生活にプラスに働くのか、学んでいきましょう。
仕事によるストレスがなくなる
アーリーリタイアをすることで、仕事によるストレスがなくなります。会社に勤めていると、上司や先輩との人間関係に悩んだり朝早く起きて通勤したりと、何かしらのストレスを抱えがちです。
アーリーリタイアをすることで、ストレスの原因になっていた「仕事」をシャットアウトできるため、人生が良い方向に進むかもしれません。
自由に時間を使える
仕事に費やした時間も含めて、時間を自由に使えるのもアーリーリタイアの魅力です。1日24時間のうちおよそ半日を仕事に充て、家にいる間も仕事のことを考えている方にとっては、アーリーリタイアをして仕事から離れるのは大きなメリットといえます。
さらに仕事を理由に諦めていた趣味を始めるのも、良い過ごし方です。時間がなくてできなかった資格取得のための勉強をしたり、家族と一緒に思い出作りに旅行をしたりと時間の使い方は豊富です。
新たな挑戦ができる
くわえて新たな挑戦ができるのもアーリーリタイアの大きなメリットです。退職して時間を自由に使えるため、新しい趣味を開拓したり知識を習得したりとさまざまなことにチャレンジできます。
例えば30代で仕事を退職して、時間が取れなくてできなかった登山ができるようになるとしましょう。新たな挑戦は「生きがい」となり、今後の人生をより豊かにしてくれます。新たな自分を発見し喜びを感じられるのもアーリーリタイアの魅力です。
アーリーリタイアをする5つのデメリット
一方で退職し完全に自由になったことによるデメリットもあります。
- 収入が得られない
- 資産が減少する
- 社会的信用が落ちる
- 再就職しにくくなる
- インフレの影響がある
「自由」であることは良いように見える一方で、大きなリスクを背負うことになります。デメリットを知って、どのような対策を講じられるか考えましょう。
収入が得られない
アーリーリタイアをすると、会社に勤めていたときのように安定した収入を得られません。十分な資金を用意した上で早期退職をしたとしても、いつどこで急な出費が発生するか分からないものです。多額の手術代が必要になったり、家族や親戚のためにお金を出したりすることも考えられます。
また将来受け取れる厚生年金が減ることにも注意しましょう。年金が減れば、さらに多くの資金を準備しなければなりません。収入が得られないことは大きな壁となります。
資産が減少する
無職のなか生活していくため、資産は減少していきます。十分な貯蓄を用意した上でアーリーリタイアを始める方もいますが、実際に始めてみると次々とお金が減っていく現状を目の当たりにして不安になる方もいるものです。
例えば単身世帯での1か月あたりの支出はおよそ24万円です。普通に生活するだけで、年間でおよそ290万円も減少します。さらに突発的に入院・手術代や冠婚葬祭費が発生すれば、大幅な減少も避けられません。
社会的な信用が落ちる
会社を辞めることで社会的な信用が落ちるのもデメリットです。「無職」と同じ扱いになるため、クレジットカードを新しく作れなかったり、マンションやアパートを借りられなかったりします。万が一貯蓄が大幅に減少した場合にローンを借り入れようとしても、審査に通らないこともあるため注意しなければなりません。
また仕事をしていたときに周りからの評価に喜びを感じていた方にとっても、アーリーリタイアをすることは大きな問題です。人から評価されたり感謝されたりする機会が減るため、精神的に不安定になることも考えられます。
再就職がしにくくなる
一度アーリーリタイアをすると再就職が難しくなります。出費が重なりもう一度社会復帰しようとしても、採用されにくい状況です。会社を辞めた時期にもよりますが、ブランクが長いと不利になってしまいます。
会社の社会人採用は年齢に上限を設けているケースも多く、おのずと選択肢が狭まってしまうものです。さらに特別なスキルがない方はより再就職が厳しくなります。正社員だけではなくアルバイト・パートなども視野に入れて検討しましょう。
インフレによる影響がある
見落としがちなのがインフレによる影響です。インフレになると物価が上がり、日本円の価値が下がります。食料品や日用品の値段が上がれば、家計の負担増は避けられません。
会社の給料はインフレにより上がる傾向にあるため、家計の悪化にはつながりにくいと考えられています。インフレ対策のために何か投資を行っている方は影響が少なくなりますが、アーリーリタイアで貯蓄だけで生活する場合には家計の管理を怠らないようにしましょう。
アーリーリタイアで失敗したケース
アーリーリタイアは魅力的な生活スタイルですが、仕事をしていない分リスクは見逃せません。貯蓄が底をついたり、生きる目標を見失ったりとアーリーリタイアにはそれなりの難しさがつきまといます。失敗しても再就職が難しくなるものです。
失敗したケースを知って最悪の事態を防ぎ、有意義なアーリーリタイアの生活を送りましょう。
【ケース1】資金が枯渇してしまった
安定した収入がない状態で生活すると、資金が徐々になくなります。65歳になったら厚生年金を受け取れることをいいことに、事前の収支計画で見通しを甘く立てる方もいるものです。
油断しているときに突然入院や手術費用、自宅の修繕が必要になれば、貯金を切り崩さなければなりません。お金がなくなってしまえば、アーリーリタイアの良さである「自由に好きなこと」で生活できなくなります。資金不足にならないためにも、さまざまな角度から物事を見て計画を立てましょう。
【ケース2】目標を見失った
さらに目標を見失ってしまうケースも後を絶ちません。自由になった分、人間関係などのストレスはなくなります。しかし会社員の頃には「仕事で昇格しよう」「営業成績を良くしよう」と目標を持って毎日過ごしていた方にとっては、アーリーリタイア後の生活はつらくなるものです。
1日のうち半日を仕事に充ててきた状況から考えると、時間の使い方や何のために頑張るべきかが分からなくなるのも無理はありません。新たな趣味を始めたり勉強をしたりして、目標を作ってみましょう。
アーリーリタイアに向いているのはどんな人?
アーリーリタイアには、早期に退職することならではのメリット・デメリットがあります。それではどのような人がアーリーリタイアに向いているのでしょうか。
- 早めに見通しを立てて実行できる人
- 数億円の資産を所有している人
- 不労所得を得ている人
以上3つの方はアーリーリタイアを始めても、順調に有意義な生活を送れます。
早い段階で準備や計画を立てられ、実行できる人
順調に進められるタイプは、準備や計画を早い段階から行い実行できる方です。アーリーリタイアはやりたいと思ったときにすぐできるものではありません。1年間でいくら生活費に使うのか、いつ大きな出費が発生するのかなどを考える必要があります。
さらにこれらのことを準備し計画を立てるだけでは不十分です。計画通りに生活しうまくいかなかったら原因を探り、資金が足りなかったら副業を始めるなどの行動力が欠かせません。
数億円の資産を所有している人
投資などで数億円の資産を所有しており、アーリーリタイアをしても資産が不足する心配がない方も向いています。十分な資金があることでアーリーリタイア後に急に医療費や介護費用などが発生しても、動じることなく対応できます。
何歳でアーリーリタイアをするかにもよりますが、生涯収入なしで生活していくためには数億円は必要です。株式投資や不動産投資などで成功した方であれば、アーリーリタイア後の生活を十分に楽しめるでしょう。
不労所得を得ている人
さらに不労所得があり安定して収入を得ている方もアーリーリタイアに向いています。投資などで月に5万円が入ってくるだけでも、安定感は格段に良くなるものです。不労所得を数十年と安定して手に入れるためにも、積極的に勉強しましょう。
これから不労所得に挑戦すれば、アーリーリタイアを早めに実現できる可能性もあります。時代の流れを読みつつ不労所得を発生し続ける根気のある方は、ぜひアーリーリタイアを検討してみましょう。
アーリーリタイアをするために必要となる金額は?
アーリーリタイアやセミリタイアを始めるにあたり気になるのが、必要な金額です。何歳でリタイアするのか、いくら年金を受け取れるのか、家族構成などによって準備しなければならない金額は変わってきます。
この記事では30歳・40歳・50歳でリタイアすることを想定して金額を算出しますので、ぜひ参考にしてみてください。
アーリーリタイアをする場合
年間の支出が288万円(1か月あたり24万円)で、公的年金が168万円(1か月あたり14万円)と仮定して、必要金額を算出します。
開始年齢 | 65歳まで | 66歳~85歳まで | 合計 |
30歳 | 1億80万円(=288万円×35年) | 2,400万円(=120万円×20年) | 1億2,480万円 |
40歳 | 7,200万円(=288万円×25年) | 2,400万円(=120万円×20年) | 9,600万円 |
50歳 | 4,320万円(=288万円×15年) | 2,400万円(=120万円×20年) | 6,720万円 |
30歳・40歳から始める場合、約1億円の資金が必要です。相続があったり事業で成功していたりしないと、この年齢で多額の資金を集めるのは難しくなります。
一方で50歳からであれば必要金額は大幅に下がり、6,000万円程度の貯金があればアーリーリタイアが可能です。会社員であっても収入・職業によってはコツコツとためていけば始められます。
セミリタイアをする場合
次にセミリタイアをする場合の必要金額を算出しましょう。年間120万円の収入(1か月あたり10万円)があり、年間の支出が288万円(1か月あたり24万円)で、公的年金が168万円(1か月あたり14万円)と仮定します。
開始年齢 | 65歳まで | 66歳〜85歳 | 合計 |
30歳 | 5,880万円(=168万円×35年) | 0円(=288万円-168万円-120万円) | 5,880万円 |
40歳 | 4,200万円(=168万円×25年) | 0円(=288万円-168万円-120万円) | 4,200万円 |
50歳 | 2,520万円(=168万円×15年) | 0円(=288万円-168万円-120万円) | 2,520万円 |
アルバイトや投資などの収入がある分、必要金額は大幅に下がります。ただし30歳・40歳から始める場合には5,000万円程度を用意しなければならないため、対策を考えましょう。
アーリーリタイアに必要となる準備
アーリーリタイア後に問題なく生活するために、以下の3点を準備しましょう。
- リタイア後の生活をイメージする
- 収支計算をしてアーリーリタイアができるか把握する
- リタイア後に必要な資産を用意する
リタイアをするためには前段階で何をするかが重要です。どれだけ時間をかけて計画を練ったかが、リタイア後の生活の大きな分かれ道となります。
リタイア後の生活をイメージする
はじめにリタイア後はどのように過ごしたいのかといった生活を具体的にイメージし、計画を立ててみましょう。家族がいれば「5年後に子どもは大学生になる」ことや「都内の私立に行かせる可能性もあるから出費が増えるかもしれない」などと細部まで考えます。「海外旅行に毎年1回は行きたい」といったプライベートなことも踏まえましょう。
イメージしたらその生活をかなえるにはいくら必要なのかを計算しましょう。具体的な金額が出てくれば、次の収支計算に役立ちます。
収入や支出の計算をしてアーリーリタイアができるか確認する
次に現在の貯蓄や収入でアーリーリタイアができるのかを試算します。「いつ退職すれば赤字にならず寿命を迎えられるのか」を確かめることは重要な作業です。
収支の計算にはキャッシュフロー表を用いましょう。頭で考えていることを文字にすることで、現状がクリアになります。作り方が分からない方は日本FP協会のサイトにあるキャッシュフロー表がおすすめです。PDF版・Excel版で作成でき、20年後まで収支計算ができます。
リタイア後の生活に必要な資産を用意する
最後にリタイア後の生活に必要な資産を確保しましょう。ポイントは「いつまでにいくら必要か」を逆算して、必要なプランを練ることです。例えば現在30歳で、40歳までにリタイア希望でキャッシュフローを作成した結果500万円足りないと分かれば、投資でコツコツとためていく方法も考えられます。
さらに投資で成功するためには、通勤時間の電車内で勉強をしたり積極的にセミナーに参加したりするなどの計画を立てることも大切です。
アーリーリタイアで成功するコツ
アーリーリタイアは職場でのストレスから解放され、自分の時間を持てる魅力的なライフスタイルです。成功するためのコツは4つあります。
- 資産形成を早めに始める
- 定期的に収支の見直しをする
- 節約を意識する
- お金がかからない趣味に取り組む
アーリーリタイアは「お金だけ」があれば、できるものではありません。リタイア前後の生活に気を配ることで充実した生活を送れます。
資産形成を早めに始める
資産形成はできるだけ早めに始めましょう。早ければ早いほどできる時期も早められます。万が一資産形成で失敗したとしても早く始めていれば、軌道修正が可能です。
どの方法が合っているか分からない方は積極的に情報収集をしましょう。それぞれのメリットやデメリット、失敗談などを調べることで、適切な資産の増やし方が分かるようになります。なお情報はひとつの媒体から得るのではなく、できるだけ多くの方法で手に入れましょう。
定期的に収支の見直しをする
資産が底をつかないために、定期的に収入と支出を見直しましょう。1か月に1回や1週間に1回の間隔で振り返ることでムダな出費はないか、収入は足りているのかを確認できます。
例えばキャッシュフロー表とおりに生活できず、100万円の出費が発生したとしましょう。その時点で収入を上げるために副業に充てる時間を増やせないか、スマートフォン代などの固定費を削減できないかなどを考えます。定期的に見直せるようにノートを持ち歩いたり、スマートフォンにメモしたりしましょう。
節約を意識した生活をする
さらに節約を意識した生活を送りましょう。特に買い物が好きな方や衝動買いをしやすい方は要注意です。要らないものを買ったり近い距離なのにタクシーを使ったりすることは、控えましょう。
節約は継続すればするほど効果的です。「月1回は外食で好きなものを食べてほかの日は自炊をする」「2か月に1回は1万円分ショッピングする」などとご褒美を考えると、続けやすくなります。ストレスにならない範囲で楽しんで節約しましょう。
お金がかからない趣味に取り組む
趣味をする場合には、お金がかからないものやかかりにくいものを選びましょう。課金したり高額な道具が必要だったりすると、資産がなくなる可能性があります。熱中しすぎるとやめられなくなってしまうため、初めの段階でお金のかかる趣味かどうかを見極めましょう。
例えば登山を始めるにしても、遠くの山に行くのか近くの山に行くのかでガソリン代などの出費が変わってきます。没頭している趣味がすでにあれば、場所にも気をつけて行いましょう。
リタイアのための資産運用なら不動産投資!
リタイアのために資産運用を考えている方には、不動産投資がおすすめです。不動産投資はマンションやアパート、戸建てのオーナーになり、貸し出すことで家賃収入や売却益を手にできる投資方法です。家賃収入は定期的に入るため安定した運用ができ、将来売却することでゆとりのある老後を送れます。
さらにレバレッジ効果が期待できるのも不動産投資の魅力です。数百万円程度の少ない自己資金で始められ、大きな利益を生み出します。
くわえて節税対策や保険の代わりにもなるため、金銭面で多くのメリットがあるのも不動産投資の良さです。所得税を抑え、契約者が万が一亡くなった場合にも残された家族を守ってくれます。管理の手間がかからない物件を選べば、忙しい方でも運用可能です。
まとめ
アーリーリタイアをすることで仕事のストレスがなくなったり、自由な時間が増えたりする魅力があります。一方で完全に自由になるため、資産の減少や社会的信用が落ちるといったリスクも避けられません。
30歳でアーリーリタイアをするには、1億円以上の資産が必要です。そのためにはご自身が30歳までにすべきことを明確にしなければなりません。不動産投資を行うことで大きく資産を増やせます。
定期的に収支を見直したり節約したりして、順調にアーリーリタイアができるように準備していきましょう。