不動産投資先としてアパートやマンションを一棟丸ごと購入する際は、区画の面積や間取り、現在の入居状況などを物件購入前に確認する必要があります。レントロールは、投資判断で参考になる重要な資料です。
本記事では、レントロールの一般的な記載内容やチェックポイントをまとめて紹介します。
もくじ
借主が複数存在する物件の収益性を図る重要資料
レントロールとは賃貸条件の一覧表のことで、家賃明細表とも呼ばれる資料です。同じ建物でも、物件の面積や各戸の契約内容はそれぞれ異なります。レントロールを見ることで、物件全体の収益性を確認可能です。
まずは、レントロールの概要について解説します。
レントロールは借主ごとの契約条件の一覧表
レントロールは、複数の借主の契約条件を一覧にまとめたものです。一方、同じ賃貸物件でも、区分所有のマンションや戸建住宅などでは契約自体が1つしかないため、基本的にレントロールはありません。
借主ごとの個別の契約書でも収益性は確認できますが、物件全体の情報をまとめる手間がかかってしまいます。レントロールを確認すれば、ひと目で区画ごとの面積や契約金額を確認できるため、投資判断をする際に便利です。
レントロールに法的な義務はない
実は、レントロールの作成は、法的に義務づけられていません。個人所有のアパートなど、小規模物件では用意されていないこともある点に注意が必要です。
万が一レントロールがない物件であれば、販売を仲介する不動産会社に依頼してみましょう。売主や不動産会社としてはできるだけ有利な条件で売却したいため、買主側の要望に沿ってくれる可能性があります。
一般的なレントロールの内容
レントロールの作成には法的な義務がないことから、記載内容も特に決まりはありません。オーナーや不動産会社の任意で作成するため、作成者によって書式や内容が多少異なります。
一方で、レントロールに記載すべき項目は限られているため、基本的な内容さえ理解しておけば書式を問わず読めるはずです。レントロールに記載される基本的な項目について、一つずつ見ていきましょう。
部屋番号や区画名
マンションやアパートであれば各部屋の番号、店舗の場合には区画名が記載されています。該当の区画がわかりにくい場合は、見取り図と見比べながら確認しましょう。
マンションやアパートの場合、縁起が悪いという理由から「4」や「9」のつく部屋番号が抜けている可能性があります。部屋番号だけで総部屋数を確認すると、実際の数とは異なるケースがある点に注意が必要です。
面積と間取り
レントロールでまず確認したい項目は、各部屋の契約面積、専有面積などです。また、オフィスや店舗などでフロアごと契約しているケースでは、給湯室や廊下、トイレといった共用部分が契約に含まれていることも確認できます。
事業者向けに貸し出すオフィスや店舗は一般的に面積が書かれていますが、アパートやマンションのような個人に貸し出す物件では「2LDK」などの間取りが記載されている場合もあります。ただし、坪数や平方メートルといった面積表記が一般的で、間取りは必ずしも記載されているとは限りません。
契約状況と属性
レントロールには「空室」「入居中」などの契約状況が記載されています。全室が入居中で埋まっていれば問題ありませんが、空室の多い物件を購入すると投資計画に影響しかねません。空室率の高い物件の場合は、入居者がいない期間や過去の実績などをしっかりと確認しましょう。
また、入居者の氏名や年齢、職業といった属性が記載されている場合もあります。レントロールだけで入居者の詳細は把握できませんが、入居者の傾向を把握する資料として有効です。レントロールを見て不安な点があれば、個別の契約書を確認するといった使い方もできます。
賃料や共益費といった金銭的契約内容
レントロールに記載されている情報のうち、賃料や共益費といった金銭的な契約内容は重要です。物件全体の収益性はもちろん、個別の退去による経済的なリスクも判断できます。
また、敷金や保証金などの預かり金が記載されていることもあります。預り金は退去時に必要経費を差し引いたうえで返金する必要があるため、収益性に影響する項目です。預り金のある物件を購入する際は、売主から引き継げるのかを確認しておきましょう。売買契約のなかに盛り込んで、預り金を相殺するケースもあります。
契約開始日(更新日)
レントロールには、契約開始日も書かれています。契約開始日とは、入居者が住み始めた日や、テナントを使用し始めた日です。また、契約開始日に加えて、直近の更新日が記載されているケースもあります。
契約開始日からわかることは、入居期間の長さです。さまざまな条件があるため一概にはいえませんが、一般的に契約開始日が浅い入居者ばかりの場合は入退去が激しく、空室リスクが高まるおそれがあります。
備考やその他の内容
備考や追加の情報が記載されている場合は、細かい点までしっかりと確認しておきましょう。ただし、レントロール自体の書式が自由なため、付加的な情報については作成者によります。
具体的には、駐車場契約の有無、フリーレントやインターネット設備といった特約の内容などです。オーナー負担の特約がある場合は、設備の維持にコストがかかるケースもあるため注意が必要です。
物件購入前にチェックすべきポイント
しっかりと作り込まれたレントロールの場合、項目が多すぎて確認すべき内容を見逃すおそれがあります。正しい情報を手に入れても、重要なのは読み解く側の判断です。
そこで、レントロールを見るうえで、特に注意したいポイントを4つ紹介します。
妥当な家賃契約を結んでいるか
レントロールを見るうえで、まず確認したいのが賃貸契約の妥当性です。周辺の相場に対しての家賃設定、退去時の費用負担などを細かく確認しておきましょう。
築年数の経過とともに、不動産の価値は原則減少していきます。現時点で家賃が安い場合、将来的な収益性に影響を与えかねません。また、契約に含まれる設備の確認も重要です。ランニングコストのかかる設備が契約に盛り込まれていると、見かけの家賃よりも収益は低下していまいます。
同一借主による複数契約はあるか
同じ借主が複数の物件を契約していないかどうかも、レントロールで確認すべきポイントです。個人ではあまり見られませんが、法人の社宅やオフィス利用ではありえます。複数契約にはメリットとデメリットの両面があるため、契約内容を踏まえて判断することが重要です。
メリットは、社宅やオフィスといった法人契約であれば契約期間が長くなる傾向があり、安定した収益を得られる点です。一方で、退去されてしまうと、複数の物件が一気に空室となるデメリットがあります。
また、万が一家賃を滞納された場合も、収益性を大きく損ないます。レントロールで複数契約を確認した際は、借主の属性を慎重に調査しておきましょう。
入居日に不審な点はないか
レントロールに記載されている、入居日(契約開始日)も重要なチェックポイントです。空室率の高い物件を高額で売却するために、見かけ上の入居者を増やしている可能性があります。ただし、引っ越しシーズンでたまたま入居日が近くなるケースもあるため、納得のできる理由があれば問題ありません。
不安な場合には、現在よりも前の入居状況や入居者の属性などを詳しく確認しましょう。個人での調査には限界があるため、どうしても不信感が拭えない場合は購入しないことも一つの判断です。
入居率は問題ないか
不動産投資の収益性にもっとも影響する入居率は、必ずレントロールで確認しておきましょう。また、平均的な入居期間についても、あわせて確認することが重要です。周辺物件よりも入居率が低い場合や、入居期間が短い場合には、慎重な投資判断が求められます。
一方で、入居率が多少低くても、収益性が悪い物件とは限りません。立地や設備から、周辺よりも高い家賃設定ができる物件であれば、入居率の低さをカバーすることが可能です。現状の管理方法や入居者の募集方法などに問題がある場合には、入居率の改善も見込めます。また、入居率の低さを指摘することで、購入価格を抑えられるかもしれません。
【まとめ】収益性の確認にレントロールを利用
購入物件の収益性を確認するうえで、レントロールは重要な資料です。レントロールには、部屋の区画や面積、契約状況と属性、金銭的な契約内容などが記載されています。
不動産投資先を選定する際は、物件の立地や周辺環境、将来性といったさまざまな角度から検討することが重要です。レントロールには物件の現在の状況が記載されているため、重要な判断材料となります。
ただし、レントロールに法的な義務はなく、記載内容も定められていません。レントロールの有無や記載内容を事前に確認して投資判断をしましょう。